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2009年11月 5日 (木)

妻の眼鏡

Glass 妻は目が不自由だった。これは小さいころからで、結婚した当時は強度の近視補正用の眼鏡を使用していた。大げさに言えばすり鉢で原型を取ったような眼鏡だった。
だが妻の目は眼鏡で補正されるようなものではなかった。昭和62年には障害手帳を得るようになったのだが、そこには「網膜結膜萎縮 右0.02 左0.05」と書かれている。障害等級は3級であった。私はついに彼女の目の障害を実感を持って理解できずにしまったのだが、いつも言っていたことは、視野の正面が見えない、物がゆがんで見える、ということだ。それでも包丁を器用に使って炊事場に立ち続け、自転車で買い物をしたのだからますます理解しがたいのだった。眼鏡の中にはサングラスと同様な色つきのものもあった。強い光を受けると視神経をより傷めるとの医師の指示によって作ったものだった。
こんな彼女だから、視力を出すための器具をたくさん持っていた。オペラグラスは旅行には欠かさなかったし、駅で料金表を見るための単眼鏡も持ち歩いていた。
そんな工夫をして生きたのだが、誤解される気の毒な面もあった。人とすれ違ってもその人の認識ができない。だからその人を無視するようにみえたり、軽視しているようにとられたのだった。私も相手が挨拶するのに何も返さない妻と共にいて、引け目を感じたものだった。

家の引き出しを開けると拡大鏡もたくさん出てくる。
妻が身元から去って、上記のものが皆家には残された。拡大読書機だけは長男が同じ障害を持つ人の元へ持っていったが、眼鏡は引き出を開ける度に私の目をひきつける。
もうこれらも処分しようか。

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