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2008年7月27日 (日)

妻よ、帰れ

妻が残したものをどうしても触りたくなる。処分しなければならないものを区別するのが狙いなのだが心の奥にはもっと深いものがあってともかく関係を持っていたいのかもしれない。
写真のなかには今までに見たこともない若い頃のものがあった。高校を出た直後の何人かの友達と写した初々しい姿の写真だ。私と知り合う少し前の写真には海に行って水着の仲間たちと肩を組んでいるものや、中にはサングラスをかけているものまである。
真っ直ぐに成長し、いっぱいよいものを秘めて青春を生きている尊い女性がそこにはいた。
居間に飾ってある写真も娘の結婚式でとった美しい写真である。そのときは数日後に手術を控えていたのだが生きている喜びを顔いっぱいに現していた。
  
朝起きて居間に行って「おはよう。ばあちゃんまた会ったね」と声をかけるのだが、返事が返ってこない寂しさがわたしの胸を締め付ける。
数日前には亡くなったことがよく理解できていたのにここに来てそれが受け入れられなくなっている。もう一度あの生身の妻が戻ってきて欲しいとふと思ったりするのだ。
毎日疼痛に苦しんだ妻、その妻に帰って欲しいのではない。生きることが楽しくてしかたない元気な彼女が目の前に立って欲しいのである。

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