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2007年1月10日 (水)

カメラの目

NHKの朝の番組で地域医療に情熱を傾ける医師と患者の係りを紹介していた。医師の一人は岩手県遠野市に住む人だったが、この医師は家庭を訪問し、癌を病む老人とその家庭を支えていた。

感動したのはその医師が老人の希望を心底受け入れて診療に当たっている姿だった。

ある日、老人がかつて妻と毎日暗くなるまで牧草刈りをした草原に行ってみたいと言い出した。映像はやがてこの医師と家族が車で老人を広い草原に連れて行く場面を映し出した。車から降りて手ぬぐいを被った老人を医師と家族が車イスを押しながら草を踏みながら進んでいた。しばらくして、その一団は立ち止まり、おじいちゃんは満足そうに目を細めて遠くを眺めたのである。

すると今度は老人が「歩きたい」と言い出した。おばあちゃんと一緒に何十年も働いた大地を踏みしめて歩きたくなったのだろう。

医師と家族はおじいちゃんの両脇を抱え車椅子から立つのを手伝った。カメラはそこからおじいちゃんの靴を履いた足元に焦点を合わせていた。初めは引かれているようだったが、やがて足が一歩、一歩交互に前に進んで行った。草の上を歩いていた。
カメラは人を生かす、喜びを与えるところに焦点を合わせ、そこを切り取って紹介していたのだった。わたしはおじいちゃんと周囲の人の気持ちを察して目が潤むのを禁じえなかったが同時に、わたしたちの目はこうして隣にいる人の最も喜ぶ関心事にいつも向いているだろうか自戒した。

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