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2006年8月11日 (金)

オシム、トイレに行く

 サッカー日本代表チームの監督にオシム氏が就いて、その初戦が先日あった。日本は幸先のよいスタートを切って、前半に二点を取った。ところが後半はなかなか点が取れない。そしてそのまま終わりそうな形勢だった。雨がひどく降って選手も疲れ、動きも鈍くなっていた。
 オシムという人はどこか哲学者のような風貌がある。監督就任に当たってのインターヴューでもスポーツ選手というより学者のような受け答えをしていた。先日の試合でもベンチに背を丸めて、背広姿で冷静に経過を見つめているようだった。
 いよいよ終了の笛が鳴るころになった。突然彼はベンチを立って、フィールドから出て行ってしまった。こんな試合は見ておれん、ということかとびっくりしていると、実況のアナウンサーが彼を追う映像を見ながら、「トイレに行ったようです」と言った。
 これには驚いた。試合が終わると直ちに監督同士挨拶もするだろう、インターヴューも予定されているはずだ。第一、がんばった選手が引き上げて来て、監督がいないなんてなんとも言い訳がつかない。
 しかし、トイレに行ったことは事実のようだった。のそのそと彼は再び姿を現したからだ。
 わたしはびっくりする反面、彼の自由さがうらやましくなった。場面の重大性よりも自分に正直に行動する彼の自由さをうらやんだのである。
 わたしはあちこちの講演に出かけるとき、最も神経を遣うのがトイレのことだ。特に冬場はトイレが近い。もしも講演中に行きたくなったらどうしようと考えると前日あたりから落ち着かない。大抵の会場には車椅子で使えるトイレはないから、そうなると最低二十分は中断することになるだろう。
 わずか二百人ぐらいの人を前にした講演でもこう心配するのに、数万人の観客と全国の視聴者の目を前にして、堂々とトイレに立つオシム氏はまさに大監督の資格ありというべきだろう。

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