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2006年6月 2日 (金)

友との出会い

 外に立っていたら「渋沢だいね」と声をかけられた。「そうですけど、どなたでしたっけ?」わたしはそう答えざるを得なかった。
 「竹内だよ」。
 そう言われてもまだわたしは思い出せない。少し分かったふりをして「ああ、竹内君。中学の時はどこに住んでいたっけ?」。私は探りをいれた。
 「昔は○○に居たけど、今、東京製菓の裏に住んでるんさ。少し前脳溢血をやっちゃって、歩くのが不自由なんだ。あまり座ってばかりじゃ駄目だって言うからたまにはこうして散歩してるんだよ」。竹内君はそう話を続けた。わたしたちはしばらくの間昔の友達の話をして別れた。
 家に入って昔の名簿を取り出した。そして竹内という名前の友を捜した。20年ほど前に水上で持った同窓会の時の写真も取り出してみた。そしてようやくその男が竹内▽▽君であることがおぼろげながらわかってきた。思い返してみるとわたしは中学時代あまりlこの君とは話したことも遊んだこともなかった。中学を出てから会う機会がなかったことは言うまでもない。
 ただ中学時代の記念として残っているサイン帳をめくって見るとそこには▽▽君の名前でこう記されているのであった。「久君へ。久君とも長い9年間勉強したり遊んだりしてきましたがもう別れなければなりません。別れてからも友達を忘れずに手紙のやり取りをしていきたいと思います。また久君はどこに行くのかわかりませんがぼくは中学校を卒業して社会に出ていくのです。久君もよりなお一層勉強に励んでよい社会人になってください。では君の健康を祈る。さようなら。▽▽より」
 ここには純真な少年の心情がやさしく吐露されている。高校から入学を断られ行く先のないわたしをおもんばかる心も見える。50年余が経っているとは言えこのような友を思い出せなくなっている自分、いや人間というものをどうとらえていいのか。わたしは今穏やかではない。

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